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木琴のラグタイムとは? [other]

木琴の「ラグタイム」というのを、どう説明すれば良いのかな、特に、ピアノやギターと違う「ザイロフォン・ラグ」について、考えていました。

日本では、1980年代にカナダの打楽器アンサンブルグループ・NEXUSが来日公演の際、G.H.グリーンの作品始め、木琴で奏でるラグタイムを披露して以来、木琴で演奏する曲を「ラグ」のように認識されている部分があるように思います。

でも、同時代(1920年代頃)に演奏されていた木琴の曲には、「これはラグじゃ無くてポピュラー、これは軽クラシック」と認識出来ると思うこともあり、それをどうすれば伝えられるかな、と悩み、アメリカの木琴研究家、デヴィッド・ハーヴィさんへ尋ねてみました。以下は頂いた回答を私なりに訳して、音源のリンクなどを加えた物です。

[るんるん][るんるん][るんるん]

ラグタイムは、いくつかのタイプを含みます:

1)(1880~1900年代)
初期の形成的なラグタイム(ケークウォークやシンコペーションマーチ)は、しばしば、歌(例「ハッピーデイズ・イン・デキシー」など)として、または、器楽曲(例「デキシー・ブラッサムズ」など)のための行進曲として出版されました。
この頃のラグタイムの形式は、強拍から外れることが際立つメロディを伴う正確な低音を含みますが、シンコペーションを含みません。

参照;
Happy Days in Dixie 1908
Happy Days in Dixie on xylophone
Happy Days in Dixie music score piano

Dixie Blossoms
Dixie Blossoms music socore


2)(1890〜1910年代)
ピアノ用の古典的なラグタイム曲(S・ジョプリンジョセフ・ラムジェームズ・スコットのような作曲家によって書かれた曲)、これらは、常にピアノのために書かれ、上級テクニックを必要とする物でした。このスタイルは、規則正しいベースとバックビート(裏拍)を左手で、非常に複雑なシンコペーションが右手のメロディで演奏されます。


(以下は、YouTube)
ジョプリン
J.ラム
J.スコット



3)(1900〜1920年代)
民俗音楽のラグタイム(チャールズL.ジョンソンジョージL.コブユーディ・ボウマンのような作曲家によって書かれた曲)。
これらは、大抵、(前述の)ピアノ用古典ラグタイム曲より非常にシンプルなテクニックを含んでいるピアノ作品でした。ピアノのために出版されたけれど、そのメロディがシンプルな性質を持つので、これらの作品は、しばしばバンドや他のソロ楽器用に、書き換えられたり、編曲されたり、演奏されたりしました。
このスタイルは、強拍から外れることが際立つ安定した拍子のメロディを含みますが、古典ラグタイムよりも単純なシンコペーションです。


チャールズL.ジョンソン Dill Pickles
ジョージL.コブ Russian Rag
ユーディ・ボウマン 12th Street Rag



4)(1910〜1920年代)
ノベルティ(目新しい・珍しい等の意味)ラグタイム。このジャンルはいろいろなソロ楽器の為の作品でした。そして常に、その特定の楽器演奏者によってに書かれました。(例えばピアニスト/フェリクス・アルントズィズ・コンフリー、木琴奏者/G.H.グリーン、サックス奏者/ルディ・ウィドホフ、バンジョー奏者/フレッド・ヴァン・エプスなど)

フェリックス・アルント Nola
コンフリー Kitten on the Keys

フレッド・ヴァン・エプス演奏 Maple Leaf Rag
ルディ・ウィドホフ演奏 Sax O Phun

このスタイルは安定した拍は含みますが、シンコペーションを必ずしも含みません。シンコペーションに代わって、アルペジオや早い動きや、重音奏法など、とても複雑でリズミカルな形式です。



これらがラグタイムの4つの基本的なスタイルです。しかし、ラグタイム作品に加えて、ラグタイム時代(1890年代 〜1920年代)の間、どんな音楽でも「ラグタイム風に演奏する」という伝統がありました。

この「ラグタイム風に演奏する」というスタイルが、G.H.グリーンがオール・スター・トリオやフラー・レクター・ノベルティ・オーケストラでやっていたことです。他の多くの器楽演奏家もポピュラー音楽を「ラグタイム風に」演奏していました。

「ラグタイム風に演奏する」というのは、リズミカルなパターンやシンコペーションを用いて、スタンダードなポピュラー音楽のメロディを装飾することです。
したがって、どんなポピュラー音楽でも=たとえ出版された時ラグタイム作品でなくても、「ラグタイム風に」演奏されれば、ラグタイム・パフォーマンスになりました。

アメリカの市民は、1910〜1920年代のダンス音楽が「ホット」であることを望みました。「ホット」というのは、リズミカルで激しい躍動感を伴うという状態です。演奏家がポピュラー音楽を「ラグタイム風に演奏する」方法を知っていれば、彼らは「ホットな」ダンス音楽を提供することができました。
しばしば、アメリカ人は1890年代〜1920年代にリズミカルな音楽を出版し、録音しました。その音楽は必ずしも上記の1つのカテゴリーだけに簡単に、または、正確に適合させることができません。

1890〜1900年代のピアノ用古典ラグタイム曲は、はっきり認識できます。しかし、「ホットな」ポピュラー音楽が1910〜1920年代(G Hグリーンが活発だった時代)に、より流行していた頃、多くの「ホット」音楽スタイルがありました。ラグタイムだけでなくストライドピアノも、ニューオーリンズジャズシカゴ・ジャズチャールストン・ダンス音楽など、まさしく多くのジャンルの音楽が同じ時代にありました。


[るんるん][るんるん][るんるん]

ということで、ザイロフォン・ラグは、音楽のジャンルでいうラグタイム、でなく、演奏スタイルがそれを識別する鍵になるということです。

ちなみに、スイングジャズで最初に木琴(ザイロフォン)を演奏に取り入れたのは、レッド・ノーヴォRed Norvoといわれます。ハリー・ブリュワーHarry Breureは、鍵盤打楽器でのスイングスタイルをノーヴォから学んだそうです。

同時期の偉大な木琴奏者の一人、サミー・ハーマンSammy Hermanは、スイングへ転身しなかったようです。卓越したテクニックで彼が奏でていたのはラグタイムを始めとするポピュラーソング、だったといえます。

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