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Franz Krüger ~フランツ・クリューゲル~ と当時の木琴考察 [xylophonist]

(2023/07/16 クリューガーが4連木琴を演奏していたと思われる部分を追記)

今回は、前回投稿したクルト・エンゲルの先生でもあったフランツ・クリューゲル。(英語読みすると、クリューゲルというよりはクリューガーなのですが、日本語表記のレコードを参照してクリューゲルと呼ぶことにします)ドイツの打楽器奏者で、1880年12月9日、ドイツのロースラウで生まれ、1940年6月22日にドイツのベルリンで死去しました。
音源資料をまとめているうちに当時ドイツで演奏されていた木琴が気になり、手元の資料を見ながら考察します。

私の所蔵レコードがこちら↓
IMG_4658.jpeg
人物がわかる写真等は見つけることができませんでした。

打楽器奏者にとっては、木琴よりも、もしかしたらスネアドラムとティンパニの教則本の著者であることの方が有名かもしれません↓





この教則本を説明する文章は、次のとおりです→

フランツ・クルーガーは、1880年12月9日にドイツのロスラウ(現在のデッサウ)で生まれました。彼はベルリン国立歌劇場の最初のソロ・ティンパニストであり、国立音楽大学(現在の国立音楽大学)の教授でもありました。 1942年、彼の元教え子クルト・ウルリッヒは、オーケストラの研究集とティンパニとスネアドラムの実践的な練習を含む、学習教材の編集を作成しました。これは先生に敬意を表するための方法でした。以来、これらの練習は数世代の新進気鋭のティンパニ奏者や打楽器奏者と共に行われてきました。オーケストラのティンパニと打楽器に対する技術的要求は着実に高まっていますが、フランツ・クルーガーの練習曲は、音楽性と典型的なオーケストラの要求事項の組み合わせにおいて依然として非常に価値があります。フランツ・クルーガーによる練習は、音楽性と典型的なオーケストラの要求の組み合わせにおいて、今日に至るまで非常に評価できるものです。彼の有名なティンパニ練習曲第 45 番は、今日に至るまでの彼の練習の重要性を示す一例で、今でも試験やオーディションの基準の1つと考えられています。

***** ***** ***** *****

第45番は、旧東ドイツの古い民謡だそうです。ティンパニを歌のように奏でる必要性を伝えていたのではないでしょうか。弟子に対する愛情を感じます。

ちなみにドイツ版Wikiによれば、
彼の最も有名な生徒には次のような人がいます。

*ゲラシモス・アヴゲリーノス(Gerassimos Avgerinos)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団首席ティンパニスト
*ヴァルター・ベンダー(Walter Bender)、ベルリン・オペラ打楽器奏者
クルト・エンゲル(Kurt Engel)、ソロドラマー RSO ベルリン
*フリーデマン・ハブナー(Friedemann Habner)、ベルリン歌劇場首席ティンパニスト
*ハンス・ハンセン(Hans Hansen)、打楽器奏者/ティンパニスト、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
*フリッツ・ロイター(Fritz Reuter)、ドラマー RSO ベルリン
*クルト・シーメンツ(Kurt Schiementz)、ソロ・ティンパニスト RSO ベルリン
*ルディ・シュライバー(Rudi Schreiber)、ベルリン・コーミッシェ・オペラ打楽器奏者
*クルト・ウルリッヒ(Kurt Ulrich)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団打楽器奏者
*クルト・ゼルベ(Kurt Zerbe)、ベルリン・オペラ打楽器奏者

(私個人的には、エンゲルの所に鍵盤打楽器のことが記載されていない事が不満です・笑)

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YouTubeにたくさんクリューゲルの演奏がありました↓

* Xylophone-Solo Franz Krüger 1923
* Franz Krüger(Xylophon) - Glockenklänge(1924)
* Kammermusiker Franz Krüger - Das träumende Schneeglöckchen
* Franz Krüger(Xylophon) - Elsa
* AMERICAN PATROL (アメリカンパトロール) - FRANZ KRÜGER 〜
* “Der Specht” Franz Kruger, Xylophon-Solo - Homocord 4-3110 - 78rpm -
* Kornblumenlied - Franz Krüger Xylophon - 1929
* “Maiglockchen” Franz Kruger, Xylophon-Solo - Odeon 4 3110 - 78rpm -
* Der Carneval von Venedig - Franz Krüger Xylophon - Virtouse
* Kammermusiker Franz Krüger - Kosestündchen
* Franz Krüger, Glockenspiel - Horch auf die alte Kirchenglocke - Charakterstück - ca. 1923
* Franz KrügerXylophon - Die Mühle Im Schwarzwald(1924)
* Franz Krüger Glockenspiel Virtuos Faun & Elfen Homocord B.41
* Franz Krüger, Glockenspiel - Glockenblümchen läutet - Gavotte - ca. 1923
* Frantz Krueger - BRAVOUR GALOP 日本コロムビア
* Mélodies Hongroises (Franz Krüger) — [Franz Krüger] (1924) [Reneyphone F48758]

***** ***** ***** *****

ここで、ふと気になったのが、クリューゲルが当時演奏していた木琴の形。
ドイツでは今でも民族楽器としての演奏にFour-Rowといって4連になっている縦型に演奏する木琴が使われていると思います。下の図の左側がそれです↓
IMG_4679.jpeg

IMG_4678.jpeg
この図は1933年に同じくドイツの木琴奏者、オットー・ゼーレ(Otto Seele)が出版した教則本の中にあり、図のほかにも縦型木琴の音の配列が記載されています↓
IMG_4681.jpeg
2連の縦型木琴もありました↓
IMG_4680.jpeg
でもこれはよく見ると、現在の木琴と同じ音の配列です。わざわざ縦に記載しているのは、4連と比較しやすいからなのでは、と思いました。

前半に基礎的な楽典が数ページにわたり、丁寧に説明されています。木琴は他の楽器よりも最初に演奏するにはわかりやすくてすぐ弾ける様になる楽器、と紹介もされています。
IMG_4676.jpeg
(ドイツ語と英語の表記なので、わかりやすくてありがたい)

その後に続く曲集の集め方が素敵です。
IMG_4682.jpeg
「やさしい曲」として「キラキラ星[ぴかぴか(新しい)]」が!続く曲は「もみの木」だったり。
左手と右手と手順も記載されています。

それに続く曲には、各国の印象深い曲?と思われる編纂です。
IMG_4684.jpeg
↑スコットランド、アイルランド、アメリカ。
アメリカのコーナーには「Yankee Doodle(アルプス一万尺のメロディ)」。

IMG_4686.jpeg
↑ロシアのコーナーには沢山の曲が掲載されています。この国が木琴発祥に関わっていることへの敬意なのかな?と思いました。

***** ***** ***** *****
クリューゲルの演奏を聴くと、テンポ感の確かさ、右手左手の完璧なバランスコントロール、木琴という少し不自由な楽器の上に立つ音楽性、と優れた技術に圧倒されます。クラシック曲ばかりではありましたが、ここを起点にして音楽を発展されていくことが自在にできるだろうな、と思います。
そう考えると、使っていた楽器も、現在のスタイルの木琴でも、4連木琴でも、どちらの可能性もあるな、と思えてしまうのです。はっきりした答えがわかったら、また追記したいと思います。

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そして、ここからが追記。
クリューガーのことをティンパニ奏者の観点からご存知か、読売交響楽団の岡田全弘さんへ尋ねたところ、下記の画像を送ってくださいました。
IMG_4866.jpeg

加えて、クリューガーの教則本の木琴の練習パターンのページ↓
IMG_4867.jpeg

この左右どちらの手順を使うか、右rと左l、を見ると現在の2列木琴では手順がおかしいことになる、つまり、4列木琴のために書かれていることがわかります。

以上のことから、やはり、クリューガーが演奏していたのは4列木琴だった、可能性が限りなくあると思います。
(岡田さん、ありがとうございました!)

こんなふうに、疑問に思っていたことが少しずつ明らかになっていくことは本当に喜びです。
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